装備で出される質問の例としては下記のようなものがある。
- 八ケ岳の阿弥陀北陵ルートに行きたいが、アイゼンの装備はモノポイントとダブルのどちらがよいか。
- 穂高の横尾尾根に行きたいが、バイルは縦走用のピッケルでよいか。
- 唐松の天狗尾根に行きたいが、ザックは70ℓでよいか。
初心者だから装備を選べないということをよく聞くが、考え方の道筋をたどることであらかじめ準備できることはたくさんある。どのように考えればいいかをここで順を追って説明してみる。
これを一般化してみると2つのバージョンがある。
Version1)
こんど○○○○山の□□□□ルートに行きます。△△△△の装備は☆☆☆☆でよいですか。
Version2)
こんど○○○○山の□□□□ルートに行きます。△△△△の装備は☆☆☆1と☆☆☆2のどちらがよいですか。
例1
○○○○ 阿弥陀 □□□□ 北陵 △△△△ アイゼン ☆☆☆1 モノポイント ☆☆☆2 ダブル
例2
○○○○ 穂高 □□□□ 横尾尾根 △△△△ バイル ☆☆☆☆ 縦走用
例3
○○○○ 唐松 □□□□ 天狗尾根 △△△△ ザック ☆☆☆☆ 70ℓ
一般化した質問の形式はversion2がよい。比較をすることで情報を整理できて、必要な装備の見通しが立てやすくなる。
質問をするときに理解すべきことは、質問自体が様々な情報を持っていることである。
○○○○山=>山域を表す=>おおよその傾向がわかる。例)雪稜、岩稜、雪の深さ、歩きか登攀か □□□□=>ルート=>ピッチごとのルートがわかるので想像しやすい。例)急な雪の斜面を60mほど登攀する。 △△△△=>いま対象としている装備=>例)アイゼン ☆☆☆☆=>対象としている装備のサブカテゴリ=>例)モノポイント・2爪
○○○○・□□□□・△△△△・☆☆☆☆はいろいろなパターンはあるが、考え方の道筋は同じである。
くルートが決まれば○○○○・□□□□が明らかになる。この時点で△△△△も決まる。
たとえば八ケ岳(○○○○)の北陵(□□□□)に行きたいとする。装備を検討していくと当然アイゼン(△△△△)は必要なことがわかる。
アイゼンについてもう少し調べるとモノポイントと2爪があるのでどちらがよいかという質問がになる。この質問はよく出るのは、単純に形として目につくからである。必ずしもこの質問が重要であるというわけではない。
今回はこの質問を例にとって装備の選択について考えてみる。
まずモノポイントと2爪を比較して、形状、素材といった観点を洗い出す。
最初に”☆☆☆1と☆☆☆2のどちらがよいですか。”の形式にした方がよいと述べたのはこの比較をするためである。一種類のものを見ていても着目すべきところがわからないが、2つの異なったものを見ればその差=>着目すべき観点となる。
モノポイントと2爪を比較し、アイゼンについて着目点を探すと以下のようになる。
- 前爪の数および長さ
- 素材
- 重さ
- 形
- 固さ
アイゼンの操作をした経験から案外重要なのが以下の項目である。この”案外重要な項目”を見出すのが経験の差である。
- 2本目の爪の位置
次に山域および場所について環境の違いから以下の項目について着目する。
- 岩稜
- 雪稜
- 氷
- 斜度
いづれの場所にも共通する項目としては以下がある。
- 運搬
- 靴へのフィッティング
- 壊れやすさ
まずアイゼンに関して比較する。ここでは物理的属性のみの比較。
次に上記の違いが、環境の違いにどのような影響があるかを評価。
行くルートの環境について評価。
最後に上記結果を元にして、持っていくべき装備について評価。
この結果を総合したものが下記の質問への回答になる。
– 八ケ岳の阿弥陀北陵ルートに行きたいが、アイゼンの装備はモノポイントとダブルのどちらがよいか。
初心者だから装備を選べないということをよく聞くが、考え方の道筋をたどることであらかじめ準備できることはたくさんある。