双子山で起きた事故について記事から事故の発生原因を推測してみる。
下山するために高さ100メートルのほぼ垂直になった岩場を、ロープを伝って降りていた最中に転落しました。
まず下山中の事故だからコンテ、懸垂下降、ロワーダウンでの事故である。
石井さんは友人と2人で朝から登山に来ていて、事故当時は、持っていた50メートルのロープを途中で掛け替えながら岩場を降りている最中で、石井さんは高さ40メートルほどの所から転落したということです
コンテではない。”掛け替え”の意味がよくわからないが、おそらく2本のロープを使って懸垂を繰り返していたと考えられる。一年の経験があることからロワーダウン(アシスト懸垂)にする必要はない。
懸垂下降中の事故であれば以下が考えられる。
- 手をはなした
- ロープのすっぽ抜け
- 確保器がついていない・外れた
手を離したとしても確保器がセットされていれば、確保器とロープの摩擦であっという間の落ち方はしない。落下したと記述されていることから確保器-ロープの摩擦は一切なく、速い速度で落ちている。
「あっ」という声がして男性が見ると、石井さんが命綱のない状態でロープにしがみついており、その後力尽きて落下したと いう。
また命綱がないといっていることから確保器はセットされていない。よって手を離しただけではない。
「あっ」という声がして男性が見ると
声を聴いてすぐに見えるということは上から下というよりも、下についている先行者が声で見上げたと思われる。よって一人目の懸垂下降はうまくいっている。この場合ロープのすっぽ抜けではない。
命綱のない状態でロープにしがみついて
ロープにもしがみついていたことからも、ロープのすっぽ抜けではない。
パートナーの見たものが確かなら、落下直前には確保器が体についていない状態で、ロープにぶら下がっていることになる。よって確保器がついていなかったか、はずれたのだろう。
このような状態になるには、3つの理由が考えられる。
- そもそも確保器をつけていないで懸垂下降を開始してしまった。
- 確保器はセットしたが何らかの理由で確保器が体から外れた。(確保器が体についていないでロープについている)
- 確保器はセットしたが何らかの理由で確保器からロープが外れた。
上記3つについて検証するために切り分けをする。
そもそも確保器をつけていないで懸垂下降を開始してしまった
そもそも確保器をセットしていないのは忘れたからと考えられる。確保器がビレイループではなくギアラックにかかっていたかがポイント。ギアラックに確保器があり、ビレイループに器具がなければ確保器のセットを忘れたのだろう。またもう一つのパターンとしてはボディビレイに失敗したケースもある。
確保器はセットしたが何らかの理由で確保器が体から外れた。(確保器が体についていないでロープについている)
確保器が体から外れるためにはカラビナごとビレイループから外れるか、カラビナから確保器が外れる。前者であればロープに確保器とカラビナが残っている。後者であれば、ロープに確保器が残っていてかつ、カラビナがビレイループに残っている。残っているカラビナは環なしあるいは環付きでもロックがかかっていない。
いづれのパターンでもいったんテンションがかかるとカラビナがビレイループから外れることは考えにくい。外れるとしたらテンションをかけた瞬間である。このパターンになるには懸垂下降を開始しようとしてテンションをかけた瞬間にカラビナあるいは確保器が外れ、姿勢が崩れて宙づりになった。
ただ双子山は支点が空中ではなく足がついているので、いきなり宙づりになるほど岩場から体が飛び出すかは疑問である。
確保器はセットしたが何らかの理由で確保器からロープが外れた。
まず確保器からロープが外れるパターンについては確保器をビレイループにつけたが、ロープを確保器に通すのを忘れた、あるいは通したけどカラビナにとっていなかったと推測される。いづれにしてもこの場合にはビレイループにカラビナ+確保器が残っているはずである。
このパターンも同様でテンションがかかった瞬間にロープは外れる。ロープが外れたらすぐ気付く、また支点の位置から考えてもいきなり宙づりになることは考えにくい。
双子山の懸垂はそれほど難しくない。バンドから壁に出る前に確保器にテンションがかかっていれば確保器あるいはロープが外れるのはすぐ気付くので致命的な事故にはつながらない。
しかしもともとやさしいバンドでは荷重をかけず腕と足の荷重でぶら下がる癖がついたのではないかと考えられる。確保器がセットされていればバンドでも体重をかけるのですぐに気づくはずだ。確保器をつけずにそのまま岩壁に出たところで確保器がないことに気づき、声を上げたがその時には足元が切れていて宙づりになったのではないだろうか。
記事だけではこれ以上の推測は難しいが、カラビナ、確保器がどこについているかにより原因を突き止めることは可能である。
高さ100メートル 垂直の岩場で転落死
7月26日 22時58分26日午後、埼玉県小鹿野町の山に登山に来ていた47歳の男性が、高さ100メートルのほぼ垂直の岩の壁をロープを伝って降りている最中に転落して死亡しました。
26日午後1時すぎ、群馬県境に近い埼玉県小鹿野町の標高1000メートルほどの二子山西岳に登山に来ていた東京・狛江市の会社役員、石井正寿さん(47)が、下山するために高さ100メートルのほぼ垂直になった岩場を、ロープを伝って降りていた最中に転落しました。
石井さんは全身を強く打ってヘリコプターで病院に運ばれましたが、およそ4時間半後に死亡が確認されました。
警察によりますと、石井さんは友人と2人で朝から登山に来ていて、事故当時は、持っていた50メートルのロープを途中で掛け替えながら岩場を降りている最中で、石井さんは高さ40メートルほどの所から転落したということです。
石井さんは10年ほどの登山歴があったということですが、警察はロープの掛け替えの際に何らかの理由で誤って転落したものとみて、詳しい状況を調べています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140726/k10013318261000.html
ロッククライミングの男性滑落、全身強く打ち死亡/小鹿野
埼玉新聞 7月27日(日)3時26分配信
26日午後1時15分ごろ、小鹿野町河原沢の二子山西岳中央稜付近で、ロッククライミングをしていた東京都狛江市中和泉3丁目、会社役員石井正寿さん(47)が地上約40メートルの岩場から滑落し、全身を強く打ち死亡した。
小鹿野署によると、石井さんはこの日朝、神奈川県内の登山仲間の男性(49)と合流し、標高1165メートルの同山を登山。山頂に到達後、2人でロック クライミングで降下中、滑落した。「あっ」という声がして男性が見ると、石井さんが命綱のない状態でロープにしがみついており、その後力尽きて落下したと いう。
石井さんは登山歴10年で、ロッククライミングは1年ほど前から始めたという。同署で事故原因を調べている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140727-00010001-saitama-l11