ソロクライミングは”ある程度”は完成された技術といえる。道具としてはルベルソ、グリグリ、ソロイスト、ソロエイドなどがあるし、手順もインターネットで調べれば出てくる。自分でも検証してみたが落ちた時には”基本的”には止まることがわかっている。しかし常に不安がある。
「まともに落ちた時には本当に止まるのだろうか」。この不安は当然ビレイヤによる確保をしているときも同じである、「ビレイヤは止めてくれるのだろうか」と。そうはいってもこればっかりはシステムよりも人に対する信頼のほうが本能的にたかい。システムと道具は信頼できる。それでも不安が残るときに解消してくれるのが”人”であるならば、ソロクライミングに対する不安はずっとなくならないのだろうか。
これまではルベルソをソロクライミングでは利用していた。これにはいくつか理由がある。まず一つ目は道具を余分にもっていかなくてよい。そして2つ目はルベルソによるシステムはほぼ完成されている。
一つ目の理由であるがルベルソはビレイ、セカンドの同時確保、懸垂確保に利用できる。そのためにかならず持っていく道具である。これにソロクライミングを加えると一粒で4度おいしいくなる。
そして2つ目は道具の理由である。インターネットでみるとみんな同じやり方をしている。ルベルソを逆にしてハーネスに着け、チェストハーネスを利用して固定する。ロープの巻き方は2,3通りあるがルベルソのつけ方という観点では皆同じだ。
ルベルソで本当に止まるかと聞かれるとおそらく止まるといえる。本番のクライミングで落ちたことはないが、試験的に1mほどの距離を落下してためしている。感覚としては10回落下したら9回は止まる。ただし残りの一回が微妙である。これはおそらくロープ入り方、体とルベルソの位置関係、ルベルソの傾きなどからまずい具合にロープが通り抜けてしまうことがある。偶然といえば偶然なのだが、外岩でがち落ちしたときにこの10回中の一回にあたったら目もあてられない。
そんなことをつらつら考えていた時にたまたま見かけたのがFabian Buhlの動画であった。Fabianはボルダ―から始まり、ロープをマネージメントを学び、ソロクライミングを実践している。Wetterbockwandルートは5.14である。Fabianはこのルートをソロでかつ冬に登攀している。ソロクライミング中の動画では何回か落ちているがきっちり止まっているのが確認できる。
また別のインタビューではソロクライミング中にまともに滑落をして、その際にきっちりとまってから落ちるのは考えなくなったと述べている。
この動画を見た時にソロクライミングに対して漠然と抱いていた不安感が晴れた気がした。自分で構築したシステムであり、手順である。しかしそれが正しいかはわからない。誰かにそれを証明してほしかったのだと。
FabianはGrigriを加工して使っているという。さっそくGrigriを購入。ネットで必要な加工を学び、Fabianの動画等を研究した。今まで利用していたルベルソより信頼できるシステムが出来上がった。100mの壁でさすがにがち落ちはしたくないが少なくともいってみようかという気にはなった。